転落⑧
話し合いは淡々と進んだ。
ただ単に、興味本位で浮気してしまった。
後ろめたい気持ちも、子供や旦那に対して申し訳ない気持ちも、
その時は何も感じていなかった・・・なんて、とてもじゃないけど言えなかった。
反省している。
もう二度と同じことをしない。
これを繰り返すしかなかった。
両親は、ひたすら旦那と義兄に謝り、わたしにも厳しい言葉をかけた。
両親に対しては申し訳なさ過ぎて、目を合わせられなかった。
義兄は、私がネイルをしていたり、まつげエクステをしていたりするのをよく思っていないようで、
「身なりに気を付けているのはいいことだが、なっちゃんはお母さんなんだから、
お母さんらしい格好をした方がいい」
と言った。
「自分の奥さん(義姉)は、なっちゃんと同じで男の子2人の母親をしている。
毎日慌ただしくて身なりなんて全く気にしていないが、
それでも俺はぜんぜんいいし、
格好だけ気にしている人よりきれいだと思う」
と言っていた。
もともと義姉はすっぴんでもかわいらしい顔つきをしていたからいつもすっぴんだったし、それでも気にならなかったけど、
コンプレックスだらけのわたしは、メイクしないで人と会うなんて考えられなかったし、ネイルもまつエクも、母であっても、育児に追われて疲れてると思われたくないという小さなプライドだった。
なので義兄の言葉は何も心に響かなかった。
むしろきれいごとを言っているようで虫唾が走った。
旦那は、みんなから謝られ、それでも自分はなっちゃんに対してまだ愛情があるし、
これから信じていきたいと宣言することで、
なんて心が広いんだ!と周りに思われていることに優越感を感じているように思えて、
気持ちが悪かった。
たいして私を罵倒するわけでもなく、周りに私の醜態をさらすことで、自分が悲劇のヒロインになっているようだった。わたしはそんな旦那の本音がわからなかった。
その日は、旦那が許すなら、これから2人で頑張っていく。
両親や義理は見守るか困ったら相談してほしい。
何かあれば助ける。
そんな風に終わったと思う。
正直、なんだこれ・・・と思った。
こんなの、私と旦那、2人の話し合いでよかったんじゃないか。
両親にもこんな恥ずかしい思いさせなくてよかったんじゃないか。
義兄は面白がって、奥さんにこのことを話すだろうと思ったら腹が立った。
でも丸くおさまったから、もうこれでいい。
悪いのは完全に私なんだし。
これでとりあえずひと段落ついた・・・
とその時は思った。
つづく