転落⑦
旦那は外に出て武田さんに電話した。
私は会話を聞いていないが、
私と二度と会わない。
私と二度と連絡を取らない。
そう約束し、終始謝っていたらしい。
「情けない男やな。あんな男の何がよかったんや。」
電話を終えた旦那がそう言った。
どうでもよかった。
それから、田舎の両親がやってきたのは翌日のことだった。
子供たちが寝た後の時間を見計らい、夜9時過ぎに来ることになっていた。
そして旦那の兄も。
先に着いたのは、すぐ近くに住んでいる兄だった。
私は、旦那の兄が嫌いだった。
若いころはやんちゃをしたりしていたようで、まじめな旦那は憧れのようなまなざしで
思っていたが、浮気のひとつやふたつ、したことがあるような人だった。
そのうえ数年前から軽度のうつ病と診断され、2年ほど休職し、
今は復帰さえしているものの、元いた部署から離れて、簡単な事務業務に就いていると旦那から聞いていた。
休みの日はこれまた近くに住んでいる実家に入りびたり、
半身不自由なお母さんなら何も言われないと思ったのか、パチンコばかり行っていた。
そのお金はどこから出ているのか・・・
私は、旦那には到底言えなかったが、お父さんが亡くなった後の保険金を管理していたお義兄さんが、それをこっそりくすねているのではないかと疑っていた。
そんな兄がここぞとばかりにしゃしゃり出て、父親代わりのようにするのが胸糞悪かった。
兄は到着するなり、
「なっちゃん・・・」と言って私の頬を軽く、ほんとに軽くだけど叩いた。
私は、大嫌いだけど、反省する場でもあったので、
「ごめんなさい」と言った。
すると、
「LINEの内容見たよ。ご両親に見せてもいいか?」
と言ってきた。
それにまた怒りがこみ上げた。
「それは必要ですか?」
と私が聞くと、
「両親が見たらびっくりするような内容やね」
と言ってきた。
「必要なら見せてもいいですが、両親は見たくないと思います。」
と私が言うと、
「知っておいてもらう必要があるかなーと思って」
と。
「なんでですか?」
私はにらみつけた。
完全におもしろがっているように思えた。
LINEの内容も、きっと興味本位で旦那から送ってもらったものだと思った。
そんなしょうもない兄に言い返すこともできない私の立場・・・
悔しかった。
そして、私・旦那・私の両親・旦那の兄による話し合いが始まった。
つづく。