転落⑥
「ナツミはどうしたい?」
の質問に、
「ものすごく後悔している。立場をわかっていなかった。本当に軽率だった。
これから心を入れ替える!
許してくれるなら、けんちゃん(旦那)と子供たちとずっと暮らしたい」
と言った。
蚊の鳴くようなか細い声だった。
本当に反省していた。
たった1回のことがこんなおおごとになるなんて想像していなかった。
すると旦那は、
「今回、そうでも言わないと反省しないかと思ったからそう言ったけど、
これから俺もどうなるかわからないけど信じたいし、やっぱりまだ愛情はあるし、
なっちゃんの両親には言わないでおくよ。ただ、浮気相手にも連絡とってほしくないから俺から電話する。電話番号はもう控えたから。」
武田さんに迷惑がかかるのは嫌だったけど、武田さんの家族を壊そうとまではしていないことにほっとした。
そして、両親にも言わないって言われたことに対しても、心の底からほっとした。
しかし・・・
その数時間後、旦那がもう報告したという、九州に住んでいるおばさんから私に電話がかかってきた。
「なっちゃん。何があったん?悪いけど、なっちゃんのご両親に電話で報告させてもらったよ」
は?終わった・・・
「ご両親、とっても驚いていてね、まさかうちの娘に限って・・・
って何度も言ってたよ。
それからお母さんは泣きながら謝られていて、
けんちゃんにも謝りたいって言っていた。
そりゃあ信じられないよね。
でもねなっちゃん、あなたはそれぐらいのことをしてしまったんだよ。
2人のかわいい子供たちがいるのに、一線を越えるとき、子供たちの顔がよぎらなかった?
だとしたら、自覚が足りないんだと思うよ。あなたは母親なんだから。」
それから、こんこんと説教された。
正論だ。その通りだ。
ただ、それまでにたった1回、結婚式でしか会ったことのない、ほとんど何も知らないおばさんに、なんでそこまで言われなきゃいけないんだろうと心の中で思って、怒りがこみ上げた瞬間だった。
つづく。