転落④
お正月休み何してた?
昨日は旦那のお兄さんの家に遊びに行ったよー。
武田さんの家の近くだと思う!
まじで?
マジです。どっかで会ってたりしてね・・・笑
武田さんは?なにしてた?
今日は初詣行ってきて、今は家族でラーメン食べてる。
とラーメンの写メが送られてきた。
向かい側に奥さんと思われる人の手が写っていた。
すらっと細い白い手にネイビーのネイルをしていて、
きれいな人を想像した。
特にヤキモチのような感情はなかった。
でも、そんな奥さんがいても、わたしと悪いことをしているということに
興奮はした。
おいしそう!
わたしも初詣行ってきたよー!
大吉だった♪
今年の抱負は?
うーん。ドライブデートしたい。
それはすぐ叶えちゃうやつやなぁ。
その車の中でエッチなこと、する?
変態!
するけど♡
そういえば私、こないだのホテルにピアス忘れてきたみたい・・・
うそ?大事なヤツ?
そんな高いやつじゃないけど気に入ってたからショック・・・
じゃー今度プレゼントしなかんな。
いいーいいー。
そういう意味で言ったんじゃないからね!
大丈夫、お礼はカラダで返してもらうから。笑
それなら得意です!笑
うん、知ってる。
ナツミってほんと触るの好きだよねー。
早く触ってほしいな。
わたしも早く触りたくなってきた。
先週したばっかなのにエロいなー。
来週会おっか?
うん。車の中で触っていい?
かわいいなー。ナツミは。
浮気の証拠にはちょうどよく、ご丁寧に最近の出来事を集約したかのようなLINEだった。
つづく。
転落③
リビングに行く前にトイレに寄り、武田さんとのLINEの履歴を削除した。
いつもは消しているのに。
昨日の会話だけ消していなかった。
「いつから?」
怒りを堪えているのか、旦那は冷静に見えた。
「ん?なんのこと?」
とりあえず、すぐ認めてはいけないと思い、しらばっくれてみた。
「うん、そういうのいいから。LINE見て、全部わかってる」
と私の言葉に被せるように少し声を荒げた。
カマかけてるのかな?
わたし、LINEにはロックをかけてるし…
でも、ここまで真剣な顔を見ると、カマをかけてるようには思えなかった。
「私のスマホ見たの?」
唯一攻めることのできるポイントを武器に強気な口調で言った。
「うん」
悪びれている様子もなかった。
「どうやって?」
「ナツミがロック解除する時、後ろから見てた」
やられた!そう思った。
そして、昨日のLINEを削除しなかった事をめちゃくちゃ後悔した。
なぜかって。昨日のLINEを見たら、全てがバレてしまう内容だったのだ。
浮かれて、いい気になって、調子に乗っていた。
さて、わたしと武田さんとのLINE。
どんな内容だったのか…削除した内容を思い返した。
つづく。
転落②
お正月の10連休真っ只中の旦那と、家族で帰省したり、
いとこと初詣に行ったり、毎年変わらないお正月を過ごしていた。
お正月休みの間もLINEしていた。
お互いのパートナーの愚痴や、不満。
早く会いたいなーという会話だったり。
時にはエッチなやりとりもあった。
家族と過ごしている中でも、そんな秘密をこっそり楽しんでいた。
1月5日だった。
旦那に朝方いきなり起こされた。
「ちょっといい?話がある」
熟睡してた私はスマホで時計を見た。
4:30だった。
「なに?」
と起きる気もなく言った。
すると旦那は
「浮気の事で。わかるよね?」
と。
一気に目が覚めた。
青ざめた。
「子供が起きる前にリビングで話そう」
と言われた。
浮気をした時よりもずっと心臓がバクバクしていた。
どうしよう、バレた。それしかなかった。
転落①
それから、昼間の電話や、何気ないLINEが嬉しかった。
旦那とも子供とも友達とも、何も変わらない日々。ただ、私の中で何かが弾け、わたしだけ浮かれていた。
みきちゃんにも報告し、子供を連れている昼間の公園で、そんな浮気話をしていた。
何も不満はなかったけれど、刺激がなかった毎日に、
こんなにもハリが出るのかと思うぐらい幸せだった。
もちろんだが、お互い離婚の意思は全くなく、家庭は1番にしよう
と決めていた。
会える日までは、毎日ワクワクしたし、昼間の電話もドキドキした。
彼はどうなのかわからないけど、私は恋に恋してるような、彼を好きになっていくような、とにかく恋をしている女の子になっていた。
けれど、その日はあっという間にやってきた。
武田さんとそういう関係になってからたったの3回。
つづく。
運命の日⑤
罪悪感はなかった。
ほんの出来心だった。
一瞬だけ迷った理由は、2人を母乳で育てた後のしぼんだ胸と、妊娠線が残るお腹だった。
それを見せてしまった後は、久しぶりのトキメキを楽しんでいた。
そして、一線を超えた。
それから私の生活はガラリと変わったのだ。
それに気づくのはもっと先の話。
その晩、何もなかったかのように旦那の待つ家に帰り、何もなかったかのように、会ってもいない友達との作り話がスラスラと出てくる自分にびっくりした。
浮気ってこんなもんか。
と思った。
その裏で武田さんとの連絡を楽しむようになった。
「楽しかったです、ありがとう。」
「また会いたいな」
「私も」
そんなやりとりが嬉しくて、削除したくなかった。そしてLINEにロックをかけるようになった。
運命の日④
約束の日はやってきた。
12月だった。
普段からスカートよりパンツが多い私は、
結局悩みに悩んでパンツを選んだ。
スカートを選んで、気合が入ってると思われたくなかった。
でもしっかりムダ毛の処理は念入りにしたし、
お気に入りのネイビーの下着もつけていた。
5年ぶりの再会。
ドキドキしていた。
大きく深呼吸して電車に乗った。
待ち合わせ場所に着くと、すぐに彼を見つけた。
全然変わってなかった。
ホッとした。
それからたくさん話した。
お互い5年間。
そして、お互いの夫婦生活の話が1番話が膨らんだ。
普段、大して不満はないけれど、そういう時になると不思議と旦那に対する不満はでてくるもんだ。
それは彼も同じだった。奥さんに対する不満を聞いて、少し優越感を感じたりしていた。
そしてあっという間に時間がきた。
土曜日の夜は2時間制だった。
店を出ると、
「もう一軒行く?」と。
嬉しかった。
しかし、どこも予約でいっぱいで、入れなかった。
ふと、彼が私の手を取って、自然と手を繋いで少し歩いた。
「じゃー行こっか」と言った。
手を繋いだ時から心臓の音が聞こえるんじゃないかと思うぐらいバクバクしていたけれど、その一言で一気に酔いが冷めた。
つづく。
運命の日③
久しぶりの浮いた話にママ友たちは大興奮だった。
「2人で会うの?それって・・・♡」
「何着て行くの?」
「会ったら絶対報告してよ!!」
わたしはみきちゃんが浮気したことがある話を聞いていたこともあり、
少なくともその3人は、浮気ということに対して嫌悪感を持たないことを知っていたから話したのだと思う。
そうじゃなければ、話していただろうか・・・
お互い既婚者。
ただ、昔の同僚と近況報告会をする。
その事実が、2人で会うというハードルを下げていた。
別に何もなくていい。ないのが当たり前なんだから。
そして私は妻で、母でもある。
そう自分に言い聞かせる反面、何を着ようか悩み、そわそわしていた。
そしてその日はやってきた。
つづく